研究概要 |
本研究で用いた環状過酸化物の新規合成法開発の手法は、(1)アルケンオゾン化の鍵中間体カルボニルオキシド環化付加と(2)カルボニルオキシドのプロトン性溶媒による捕獲生成物を出発原料とする環化縮合の二つに分けられる。 第一の手法で見いだされた主な発見として、ニトロン、カルボニル基との[3+3+2]環化付加により、新規骨格8員環過酸化物3, 4-ジヒドロ-1, 2, 5, 7, 4-テトロキサゾシン誘導体が得られること、またイミンとカルボニルオキシドとの環化付加で5員環過酸化物1, 2, 4-ジオキサゾリジン誘導体が得られるが、これはこの誘導体合成のもっとも汎用性の高い手法である。 第二の手法で見いだされた主な知見として、求核性の低いトリフルオロエタノール中でのインデンのオゾン化では、カルボニル基の隣接基関与を経由して反応が進行し、対応するα-アルコキシ-α'-ヒドロキシエーテルが得られるが、ここで得られた溶媒捕獲生成物は酸触媒存在下で容易に二量化し、10員環過酸化物ヘキソキセカン誘導体を与えること、またこの溶媒捕獲生成物とホルムアルデヒドオキシドとを反応させた後、酸触媒環化を行うと、8員環過酸化物1, 2, 4, 5, 7-ペントキソカンが得られることが分った。さらに、カルボニルオキシドの不飽和アルコールによる捕獲体のN-ハロスクシンイミドをメヂエーターとする環化では、ハロゲン置換1, 2, 4-トリオキサンおよび1, 2, 4-トリオキセパンが得られることも見いだしている。このように、オゾン化反応を巧みに使うことにより、多様な骨格を持つ5〜10員環過酸化物が安全かつ高い収率で合成可能なことを明らかにした。 なお合成した環状過酸化物約40種類について、その評価を群馬大学医学部寄生虫学教室鈴木守教授に依頼し、owl monkey (Aotus trivirgatus)を対象に遂行中である。現在予備的報告として、1, 2, 4-トリオキソランおよび1, 2, 4, 5-トリオキサジンに抗マラリア特性があるとの報告を受けている。
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