リパーゼ触媒を用いる脂肪族ポリエステルの合成を検討した。最初に13員環ラクトンの酵素触媒重合を詳細に調べた。酵素スクリーニングを行ったところ、Pseudomonas族のリパーゼが本重合に高活性を有していた。重合挙動は酵素種、重合温度に依存し、75℃での重合では分子量2万以上のポリマーが得られた。 次にポリマーの末端構造制御を目的にビニルエステル存在下のラクトン類の重合を検討した。脂肪酸ビニルエステルを用いたところ、末端に脂肪酸エステル基が定量的に導入され、添加量によりポリマーの分子量を制御することができた。また、メタクリル酸ビニルの添加によりメタクリル型ポリエステルマクロモノマーが合成された。さらにセバシン酸ジビニルを添加剤に用いることにより、両末端にカルボン酸を有するポリエステルテレケリックスの合成に成功した。 リパーゼ触媒によるラクトン、ジカルボン酸ジビニルエステル、グリコールの3元共重合を検討した。ラクトンには12、13、16員環ラクトン、ジビニルエステルにはアジピン酸ビニル、セバシン酸ビニル、グリコールには1、4-ブタンジオール、1、8-オクタンジオールを用いた。重合をPseudomonas族のリパーゼ存在下、イソプロピルエーテル中、60℃、3日間行ったところ、分子量5千〜1万2千のポリマーが得られた。NMR分析により、生成物は単独重合体の混合物ではなく、共重合体であることがわかった。
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