研究概要 |
シロキサンスペーサーをもつポリスチレンが、新規な液晶性ポリマーとなることを見い出し、このポリマーをマトリックスポリマーとするブレンドの相構造を制御したシャッター材料を開発することを目的とした。 川上は、まず、モノマーについて、その合成法を確立した。ついで、シロキサンをスペーサーとし、種々の構造のメソゲンをもつ重合度の制御されたポリスチレン型液晶性高分子をアニオン重合により合成した。このポリマーは、幅広い温度範囲で液晶性を示した。ポリマー主鎖の分子量・分子量分布と、液晶温度範囲、発現液晶相の構造の関係を示差走査熱分析、熱機械的分析、偏光顕微鏡観察などにより検討し、分子量や分子量分布が液晶構造に与える影響を定量的に解明した。この成果は、Polym. Bull. 36, 653 (1996)に印刷された。ポリジエンについての成果は、Polym. J. 28, 513 (1996)に印刷された。なお、シロキサン化合物の合成についても、その成果をChem. Lett. 107 (1995), 517 (1996)に発表した。これらのポリマーは、自己保持性があり、また、広い波長範囲の可視光に対して透明であった。 さらに後藤、柏木と共同して、このポリマーをマトリックスポリマーに少量分散させて、制御された海島構造の検討、ブレンドが作るドメインの大きさを制御し、低分子液晶分散のリザーバーとしての評価を行なった。後藤は、主として液晶配向膜について検討し、成果を新素材,7, 18 (1996)やJSRテクニカルレビュー,103, 1 (1996)に発表した。 本研究では、液晶性シャッター材料の開発、評価という目的は達することができたが、実際のシステムとして実用化するためには、重合度の厳密な制御、マトリックスポリマーとの相分離構造のサイズ、均一性の制御、最適低分子液晶の選択などについてさらなる検討も必要である。
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