研究概要 |
石炭の脱灰・脱硫において,1.物理的クリーニング法として信頼性の高い浮選法,および,2.化学的クリーニング法として代表的なアルカリ熱水溶液法とアルカリ溶融法を適用し、物理的手法の限界を明らかにするとともに,化学的処理による脱灰・脱硫の機構を推定した.用いた石炭試料は,アメリカ産の標準炭として知られるイリノイNo.2およびNo.6炭である.得られた結果の概要を以下に示す. 1.物理的クリーニングによる脱灰・脱硫性 ・石炭浮遊率の比較的高いNo.2炭を試料として,クロム酸カリウム添加,バクテリア表面処理,および条件付けpHの設定値変更の各手法を適用して正浮選(石炭を浮遊)を行い,脱灰率60〜70%,脱硫率70〜75%,炭質分回収率は40〜45%の結果を得た.バクテリア処理は,脱灰・脱硫の点からは他法に比べて若干劣るが,炭質分回収率が高くなることがわかった. ・石炭浮遊率の低いNo.6炭を試料として,ザンセ-ト添加による逆浮選(鉱物質を浮遊)を行い,脱灰率25.0%,脱硫率38.4%,炭質分回収率88.7%の成績を得た. ・浮遊性と単体分離度との関連を検討した結果,一粒子内の硫化鉄鉱物部分比が平均値として0.3以下の片刃粒子についてはその浮選分離が困難であると結論された. 2.化学的クリーニングによる脱灰・脱硫性 ・No.6炭についてNaOHを用いてアルカリ熱水溶液法を適用し,脱灰率88.8%,脱硫率28.6%,炭質分回収率90.4%の成績を得た.また,アルカリ溶融法(NaOH/KOH=3/1混合物)では,脱灰率94.9%,脱硫率91.4%,炭質分回収率73.0%であった. ・アルカリ溶融法における石炭中の各マセラルの回収率を推定したところ,ビトロデトリナイト+エグジナイト98%,イナ-チナイト67%,テリナイト+コリナイト58%であり,将来的にマセラル分離の重要性が指摘された.
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