研究概要 |
本研究では,構造用鋼板を用いて,引張り試験および疲労試験を行い,試験中,レーザスペックルパターンの変化を観測するとともに,走査型原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面形状の変化を観察した.引張り試験においては,レーザスペックルパターンの広がりを示す半価幅は,塑性ひずみの増大ととともに増大していったが,その値は荷重方向とそれに垂直な方向で異なっていた.しかしながら,レーザスペックルパターンの半価幅とAFMによって測定した表面粗さの間には方向によらず一価的な関係があった.また,レーザスペックルパターンの最大光度の対数値は,塑性ひずみ値に対して直線的に減少した.疲労試験においては,レーザスペックルパターンの半価幅は,疲労寿命の中期までは単調増加したが,中期以後はほぼ一定値となった.この関係も,荷重方向とそれに垂直な方向で異なっていた.また,この関係は,応力振幅によっても異なっていた.この場合も,レーザスペックルパターンの半価幅とAFMによって測定した表面粗さは方向および応力振幅によらず一価的な関係があったが,この関係は引張り試験における関係とは異なっていた.また,レーザスペックルパターンの最大光度は,試験中ほとんど変化しなかった.以上のほかに,本研究では,ステンレス鋼の腐食疲労におけるピットの発生と成長挙動を観察するとともに,レーザスペックルパターンより表面粗さを推定するための基礎となる逆問題の解析手法に関して研究を行った.これらの研究によって,レーザスペックルパターンによる観測結果より機器・構造物の余寿命評価を行うための基礎を確立することができた.
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