研究概要 |
薄板構造における振動インテンシティを計測する手法として,波動合成法を提案した.これは振動インテンシティを評価する点の近傍の変位のみを局所的にフーリエ変換するものである.この計測法では計測点を評価点を中心とする円上に配置することができ,格子状に計測点を配置する従来の差分法よりも計測が容易である.また,計測点数の選択の自由度も高い. 基礎的な場合について計測精度のシミュレーションを行った.計測誤差がなければ計測径は小さいほど精度が高いが、実際の計測では不可避なこの計測誤差を考慮すると,ある程度計測径を大きくした方がよい.この点は差分法と同様であるが,精度が良好な範囲が差分法よりも広く,ロバストな計測法であるということができる. 実測においてはレーザードップラー振動計を用いた.センサーヘッド回転機構を試作し,基本的な振動場について振動インテンシティを計測した.レーザービームは回転軸にオフセットさせるのではなく,傾ける方式とした.振動インテンシティから推測されたパワーは計測した入力パワーとよく一致し,計測法の妥当性は証明された.近接場の項を考えず,分解する波動の数と計測点数を同一とする場合,その数nは4ではやや精度が悪いが,6以上では十分であると判断された.センサー回転機構は三脚の上に載るほどの小型のもので,計測に大がかりなXYテーブルやロボットは不要であり,かつ計測対象の大きさに制限がなくなる.よってこの方法は極めて実用的なものである.
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