研究概要 |
本研究は,自然風の風速・風向の変動特性を再現する新しい方式の風洞を開発することを目的として行ったもので,コンピュータによって制御されたACサーボモ一夕でファンを駆動する方式の風洞を製作し,種々の制御電圧波形を与えたときにこの風洞から生成される気流を熱線流速計で測定した.風洞単体の寸法は,全長127cm,円形吹き出し口の口径10cmで最大風速は13m/sである. この風洞を用いて制御電圧波形をステップ状に与える実験を実施し,製作した風洞の気流が数分の一秒程度の時間内に風速の変化を達成できることを確認した.ただし,目的風速がゼロの場合は,ファンの停止後も慣性で気流がすぐには止まらないため1秒程度の時間を要する.また,正弦波の制御電圧波形を与える実験においても,変動の下限風速がゼロに近いときを除けば周期1秒の正弦変動も再現できることを確認した. さらに,カルマンスペクトルに従う変動波形を与える実験を実施し,目標とする波形のかなり細部の形状も再現できていることを確認したほか,スペクトル分布の対応から統計的にも妥当な人工自然風変動を模擬できることが分かった.特に,通常の風洞で生成される乱れスケールよりはるかに大きい乱れスケール100mの領域まで模擬できることを確認した.高周波数領域の方は数Hz付近に限度がある. 以上の結果から,本研究で製作した風洞は,少なくとも気流の主流方向変動については,自然風の変動特性を十分に模擬できる能力を有していることが明らかとなった. 風向変動の模擬は2方向の気流を合成する方式で行う.そのための予備的検討として2本の風洞を直列に配置した実験を行い,下流に置いた吸い込み側風洞の効果がわずかであることが分かった.この結果を踏まえ,2本の吹き出し式風洞を放射状に配置して風向変動を模擬する方式について引き続き研究を推進している.
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