研究概要 |
本研究度は,大深度地下空間の特性を建築人間工学の側面からとらえて,その特質を考慮した避難誘導システムを導入して大深度地下空間の避難安全性を評価するシミュレータを開発すること、ならびに、本シミュレータを用いて大深度地下空間の実現可能性を探り、地下空間の安全性確保のための空間構成手法を探ることを目的としている。 研究は、実際の地下街における実態調査と安全性評価シミュレータの開発、の2項目に大きく分けられる。 1.実際の地下街における実態調査において明らかになったことは以下の通りである。 (1)地下空間における誘導標識・サインの見認性を調査し、その問題点を指摘した。 (2)通行量の調査からは、<通路を広くとる>ことが、面積効率の面からは問題ではあるものの、通行者の密度を減らすことから、地下空間における避難安全性確保の一手段として有効であることを確認した。 2.シミュレータの開発と評価を行なった結果は以下の通りである。 (1)メッシュシステムにより平面空間を表現し、階段やエレベータなどの縦方向の動線を通して、人間の避難や煙の伝搬をディスプレイ上に表示するシステムを開発した。 (2)大深度地下空間においては地上の建物と同程度の安全性は確保されなければならないが,今回のシミュレーション結果では,大深度地下空間が地上の建物よりもはるかに危険であることがわかった。 (3)地下8階以上になれば,火災時の一時的な篭城区画を設ける必要性を明らかにした。 以上の結果から,大深度地下空間を実現するためには,従来の技術だけでは不十分であり,コスト高を伴う充分な措置を必要とすることがわかった。
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