研究概要 |
本研究では,Fe-15%Mn2元合金で,加工誘起bccマルテンサイトの逆変態処理によってオーステナイトの結晶粒径を1μm以下まで微細化するプロセスを確立した.そして,この結晶粒径微細化により,本合金の降伏強度が0.8GPa程度にまで高められ(処理前:約0.2GPa),本合金がTPIP現象により十分な延性を有することも確認した.しかしながら,本合金では微量のひずみでも強磁性体のbccマルテンサイトが生成するので,完全な非磁性が要求される分野での使用には適さないことも明らかになった.そこで,一連のFe-Mn2元合金について,Mn量と組織の関係,ならびにhcp (ε)マルテンサイト変態の結晶粒径依存性をこれらの合金の機械的性質と関連づけて調査し,以下の結果を得た. (1)Mn20%以上添加した合金では,引張試験で破断するまで強磁性のbccマルテンサイトは生成しない.そして,Fe-20%〜27%Mn合金では,非磁性のεマルテンサイトが変形中に導入され,その結果,引張強さを大幅に増大させる. (2)しかし,結晶粒が粗大な場合(100μm程度),これらの合金は,板状のεマルテンサイトやオーステナイト粒界に沿った脆性的な破断を生ずる.このような脆性破壊を抑制するには,オーステナイト結晶粒を10μm程度にまで微細化しなければならいことも明らかとなった. (3)オーステナイト結晶粒径の制御と加工誘起ε変態の利用により,適度な延性を確保した状態で,1.1GPaを上回る高い強度を有する非磁性鋼を得ることに成功した.
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