研究概要 |
他花受粉性のハウス作物(イチゴ,メロン,トマトなど)の送粉昆虫としてマメコバチを実用化し,農業技術として普及させるには商品化を図る必要がある.これを具現するには,1.周年利用できる管理技術の開発,2.大量増殖法の開発,3.人工巣の開発,4.受粉効果の実証が不可欠である.本科研では,これらの4つの課題について次のような成果を得た. 1.前蛹態の発育遅延性を利用することで,長期間発育を抑制できた.最適温度は10℃で,この温度下で420日間は生存率を低下させることなく貯蔵できた.利用までの手順は,A(前蛹を10℃で保存)-B(前蛹を22℃で加温して蛹化)-C(蛹を26℃で加温して羽化)-D(羽化した成虫を26℃で加温して糖類の蓄積促進)-E(成虫休眠を5℃で覚醒)となる.B,C,Dは最短日数で処理することが好ましい.そうすれば,Bは約20日間,Cは約25日間,Dは約20日間である.Aでは最大420日間,Eでは最小90日間,最大270日間延長が可能である.A〜Eを合計すると,755日間も保留できる.利用時期に合わせてAとEを任意に操作すればよい. 2.レンゲは開花期間が長い.休閑田を利用すれば大量の花資源が準備できる.ここで放飼することで,増殖比率(生産されたメス数/放飼メス数)は6にまで達した.また,良質の繭が生産された.北日本におけるリンゴ園での増殖比率は2〜3である. 3.人工巣は紙筒である.これらを発砲スチロールの溝に挿入した.発砲スチロール板と紙筒を着色することでハチの巣の識別能力を促進できた. 4.イチゴとトマトで受粉効果を実証した.イチゴでの受粉効果は抜群で,花粉採餌蜂であればわずか15個体/5アールで経済的なイチゴの生産ができた.
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