研究概要 |
従来より農地からの土壌侵食量の予測に使用されてきたUSLE式は多雨,集中豪雨型地域の農業環境において適用するには多くの問題点がある.例えば季節的に消長を繰り返す植生被覆の効果について考察されていない.このために作物の季節的消長,特に根茎部も含めた3次元的形態変化や栽培体系,土中水分の変化と侵食量変化との関係についてのデータを揃える必要がある.本研究は,植物の成長による形態変化に伴う土壌侵食量変化を自然降雨および人工降雨による観測を通して調べ,更にこの結果に基づいてシミュレーションを進め,作物の種類と形態の相違が土壌侵食量に及ぼす影響についての解析と実験,土壌損失を許容量内に収めるためのシミュレーション手法および土壌保全法を開発することを目的とした.研究は次のステップを踏んで行った.(1)栽培作物の異なるプロットで作物の生長と土壌侵食量との関係を観測した.(2)降雨パターンを分類し,エネルギーや降雨量と侵食量の関係を調べた.(3)裸地に発生するリルと侵食量との関係を実験で調べた.(4)根茎部も含めた3次元的形態や栽培体系を考慮した簡単なシミュレーション手法を確立する.(5)将来,異なる植生下の一流域で侵食量を予測することの必要が生じることも考えて,裸地や植生からの反射エネルギーで土壌の水分状態や植生を特定できる手法も試みる (1),(2),(3)に関しての成果は報告書にまとめ.(4)に関しては,侵食量観測データから,侵食量の大小は地上部の植生の形態のみならず,根茎部の形態が影響を及ぼしていることが予想できた.今後は根の形態と侵食土量との関係に着目して実験を行う.また根の形態は複雑であるので,写真解析,画像処理を中心に数量化を行う.(5)は本研究の最終目的の一つである.将来,土壌の流出を含めた一流域の流出問題を扱うには裸地や植生からの反射エネルギーで土壌の水分状態や植生を特定する必要がある.今回分光反射計のみで三次元形態の解析が行えるかどうかを検討するのに十分なデータ収集ができなかった.しかし今後はリモートセンシングの技術と分光反射計の測定技術が必要不可欠と考えられ今後の課題としたい.
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