研究概要 |
メロンの「うるみ果(水浸状果)」発生要因とその防止技術について,以下の諸点について明らかにした. 1.メロンの「水浸状果」は,果実肥大期の後期に株が一時的に遮光条件下に置かれることによって誘発される生理障害であることを明らかにした. 2.「水浸状果」の発生には品種固有性が存在し,供試した品種中では‘アンデス'には「水浸状果」が認められたものの,‘ラスター'では認められなかった. 3.遮光処理は果実内におけるスクロースの蓄積を阻害したものの,ヘキソースの蓄積はほとんど阻害されなかったことから,遮光処理は果実内における糖代謝関連酵素の活性を変化させる可能性が示唆された. 4.遮光処理は果実内におけるアセトアルデヒド,エタノール生成量を増加させたことから,「水浸状果」は‘プリンスメロン'等で発生が報告されている「発酵果」の一種であり,遮光処理によって果実はより嫌気的な状態に置かれるものと推察された. 5.遮光処理はエチレン生成量を増加させ,同時に果肉硬度を低下させたことから,遮光区における急激な果肉硬度の低下には,エチレン生成が関与しているものと推察された. 6.摘葉処理および着果過多処理により株のソース・シンクバランスを変えても,果実に水浸症状は認められなかったことから,「水浸状果」は遮光処理によって果実内への光合成産物の供給が制限されることが主要因で起こる生理障害ではないと推察された. 7.ABA処理は葉の光合成速度を低下させると同時に果実からのエチレン生成量を増加させ,果実の軟化を促進させた. 8.メロンの「水浸状果」の防止には,フィルムの張り替え等による受光態勢の改善,品種の選択,窒素肥料の適正化等が重要であると考えられた.
|