研究概要 |
1)活性物質の大量精製,新規活性物質の探索:平成8年度に引き続き,各キノコ10-500kgをエタノール抽出し,さらに溶媒分画後,クロマトグラフィーを繰り返し,最終的にHPLCによって精製しアッセイ用活性物質を得た.また,新たな活性物質を求めて,新たに収集したキノコに対するスクリーニングを行った結果,キヌガサタケから新規活性物質ディクチオフォリンAとBを単離・精製し,構造を決定した. 2)菌糸体による活性物質の効率的生産:担子菌糸の培養は,子実体発生が光,湿度,温度等の制御が必要で容易ではないため,子実体発生前の菌糸体による活性物質の生産を試みた.その結果,培養条件や菌株の検討によってエリナシン類の生産が大幅に向上した. 3)活性物質のin vivoにおける評価:ヤマブシタケから単離されたヘリセノン,エリナシン類には強力な神経成長因子(NGF)産生促進作用が見い出されている.この活性は培養アストロサイトを用いて証明されたものであるが,実際に生体内でもこの作用を発揮するかどうか,作用があるとすれば神経系にどのような影響を及ぼすのか,ラットを用いた実験でこれを明らかにようとした.具体的には,化合物をラットに投与した後,1)各組織でのNGFタンパク,mRNAの変動を追跡し,2)障害モデルラット(脳損傷モデルなど)に連続投与することによって神経機能の低下が抑制または改善されるかどうかを追跡した.また,得られた活性物質をラットに,腹腔内投与,静脈注射,経口投与などの方法で与え,脳内でのNGF量の定量,末梢神経系への作用をみるための心臓,顎下腺,坐骨神経中でのNGF量の定量を行った.現在,最終的な評価を行っている.
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