各種インクジェット用紙および普通の印刷・筆記用紙について、以下の諸項目の測定と解析を行った: 1.動的走査吸液計による吸液曲線 2.高速度写真による液滴の接触角変化の追跡 3.空気漏洩式平滑度 4.印字面の顕微鏡観察と画像解析によるドットの面積、真円度、色濃度 5.動的走査吸液計加圧モジュールの設計・試作と、それを用いた吸液測定 これらの項目の結果を対照して検討した結果、以下の諸点が明らかとなった: 1.インクジェット用紙の吸液曲線は短時間で鋭く立ち上がり、接触したインク滴を急速に吸収する特性を示す。しかし各種のインクジェット用紙の間には、印字層の組成・構造の違いを反映して吸液曲線の形に顕著な差がある。 2.液滴の接触角と高さの変化から求められる吸液挙動は、動的走査吸液測定での結果と良く対応する。 3.吸液曲線から求められる粗さ指数は見かけの粗さと対応しない。粗さ指数と空気漏洩式平滑度の相関プロットは普通の印刷・筆記用紙では広い範囲にわたって1本の曲線に乗るが、インクジェット用紙では不規則にばらつく。これは後者の吸液が非常に速いため、測定の最短時間側でもすでに吸収が起こっていることを示す。 4.ドット内の色濃度と真円度の間には正の相関、面積と真円度の間には負の相関がある。また真円度と接触後5ミリ秒以内の初期吸液量には正の相関がある。すなわち、初期吸液の速い紙ほど小さく、丸く、いろの濃いドットを形成する傾向がある。 5.試作した加圧モジュールは良好に作動し、200mmH_2Oまでの加圧が可能となった。平滑な紙では、圧力に応じて液体浸透が速くなる様子が追跡できた。しかし表面の粗い紙では加圧するとヘッドの縁から液漏れが起こり、意味のある測定はできなかった。これについてはヘッドの材質と形状の改善などを今後検討する予定である。
|