研究概要 |
倒立型落射蛍光顕微鏡と時間分解蛍光偏光解消測定装置を結び付け、細胞膜や分子膜の微小領域における分子運動を測定する装置の作製を試みた。 1,試作された装置の概略は次のようである。 (1)Ar-Dyeレーザーから発せられる励起パルス光は光ファイバーによって顕微鏡ステージ上の試料上に導かれ、試料に照射する角度を任意に変えられる形とした。これは平面膜分子運動を測定する際必要な測定条件であり、蛍光顕微鏡としては初めての試みである。 (2)励起光ファイバーの先端にポーラライザーを配置し、得られた蛍光をプリズムにより縦及び横偏光に分け、これらの減衰過程を同時に時間相関単一光子計数法で測定する装置とした。 2,上記の装置を用いて、以下に述べる系で測定を行った。 (1)棒状蛍光分子1,6-diphenyl-1,3,5-hexatriene(DPH)を流動パラフィンに溶解しその少量をスライドガラス上に取り、カバーガラスを載せて薄い溶液膜としたもの。 (2)DPH-propionateを一層だけ石英ガラス基板上に累積したLB膜。 (3)赤血球ghostをDPHで標識したもの。 3,測定結果は(1)のDPH溶液膜については、既存の溶液系に対する測定装置で得た偏光蛍光減衰とほぼ同じデータが得られ、(2)のLB膜については微弱光ではあるが偏光蛍光の時間変化が測定できた。しかし(3)の赤血球ghostでは、レーザー光照射による蛍光の退色が速く、解析するのに十分なデーターが得られなかった。今後更に光学系に改良を加え、細胞1個について測定可能な装置を開発する予定である。
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