研究概要 |
1.フェノバルビタール(以下PhBと略)を含む血液で血痕を作製し、イムノPCR法の原理を応用してPhBの検出をこころみた。その結果、血液付着の担体線維や血中蛋白等の夾雑物にマーカーDNAが物理的に付着し非特異的反応が強く現れ、PhBを特異的に検出することが困難であった。 2.そこで、実験系を単純化して検討するため、PhB含有水溶液を試料とした。 3.本研究で行ったイムノPCR法の操作手順は次のとおりである。 (1)抗PhBマウスIgG一次抗体をマイクロタイタ-プレート上に固相化させ、2%BSAでブロッキングした。 (2)PhB含有試料を反応させた後、変性試薬の添加および加熱乾固によって一次抗体の変性とPhBの化学的解離を行った。 (3)グルタルアルデヒドを加えてPhBをウェル上の蛋白と共有結合させ、余分なアルデヒド基はNaBH_4で還元させた。 (4)1本鎖のDNA(97mer)で標識した抗PhBウサギ血清(二次抗体)を反応させ、PCRを行った。 上記の各操作毎にTween 20含有PB又はTBSで洗浄を行った。 対照実験系として、上記の手順からPhB,一次抗体,二次抗体,変性試薬等を除外した7系を試みた。変性試薬としてSDS,メタノール,HCl,プロテアーゼK,NaOH等を検討した。以上の実験により、変性試薬として0.5N NaOHを用いた場合には、抗原PhBが存在する系では97bpのPCR増幅バンドが検出され、一次抗体を変性させた対照実験系では非特異的バンドは出現しなかった。一次抗体を変性させなかった対照実験系および一次抗体の変性が不十分な場合には、それぞれ非特異的バンドが出現した。 以上から、一次抗体を変性させる手順を加えてイムノPCR法を行うと溶液中PhBの特異的検出の可能なことが示唆された。 一層の適切な条件の設定、精製したDNA標識二次抗体の使用、血痕抽出液の前処理法につき引き続き検討を加える計画である。
|