研究概要 |
法医解剖数は年々増加傾向を示し,証拠としての剖検所見の厳格性が一層求められている.そのため,書証作成に多くの時間を費やさざるをえないのが実情であり,本研究では,解剖時に口述される剖検所見の連続音声を文字系列に変換する音声入力装置の開発を目的として研究を行った.本研究の特色は,ユーザーである法医学者と,開発者である工学者とが密接に連携して装置を開発したことにある.現在の連続音声入力装置では,一般的な文章音声を入力することはまだまだ困難である.そこで本研究では,利用者特有の条件,例えば,1)特定の話者を対象とする.2)文の言い回しがほぼ決まっており,文の構造が比較的簡単である.3)剖検所見に出現する文章の語彙数は3千語から4千語であり,書証の構成から,身体の各部ごと出現する語彙数は更に少ない,ことを考慮することによって,装置への負荷を軽くし,より使いやすい装置の開発を目指した.本研究では,文書の構造を表すために,ECGI法によってオートマトンを構築し,さらに出現が予想される単語への対応を強化するために,オートマトンの状態同士の距離を定義し,それに基づいてオートマトンを修正して一般化する方法を,平岩,勾坂,牧野が開発した.認識システムの音素認識部には,二矢田が開発したモデル音声法を用いた.以上の方法を組み合わせて全員で剖検所見の音声入力システムを作成した.システムはほぼ実時間で音声を認識することができるが,認識精度は十分なものとは言えず,今後も改善を続ける.
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