研究概要 |
生体から非侵襲的にミクロン単位の高分解能を示す断層像を得るために,low coherenceな赤外線光源とマイケルソン干渉理論を応用したOptical Coherence Tomography(光CT)の眼科用プロトタイプ機器を試作した。この機器の試作には,SLD光源,ビームスプリッター,ミラー等のレンズ系の改良を重ね,最適光学系を確立し,疑似静止検体を用いて十分な検出レベル(ダイナミックレンジ100dB),深さ方向分解能9μmを達成した。また受光角は21°まで拡大した。これらの改良ののちに作成したプロトタイプで,摘出した豚角膜のA-モード像を取得した。この像では,角膜上皮と角膜実質を判別することが可能になり,かつ角膜厚さの測定でも超音波パキメーターと近似する値を示した。さらに,手動式ながらB-モード像を角膜および強角膜から取得したところ,摘出角膜では上皮層と実質層を明瞭に判別することが可能であった。さらに角膜上皮掻爬による角膜の変化も明瞭にとらえることが出来た。強角膜の移行部位ではコラーゲンを主体とする実質部の散乱光強度の違いが明瞭に表現できた。以上より,現在のプロトタイプ機器では測定に数秒を必要とするが,分解能では10μm以下を得ており,眼科用光CT機器の基礎条件の検討は十分に出来たと確信している。今後,改良を重ねながら受光アレイ素子方式などを用いて,分解能のさらなる向上と測定時間の短縮を目指し,隅角部の観察,エキシマレーザー手術後などの角膜混濁の定量,網膜各層の観察などに応用できる検査機器を開発する予定である。
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