研究概要 |
舌下腺粘液細胞分化に異常を来すミュータントNFS/sldマウスに生後3日目の胸腺摘出(3d-TX)を施すことにより唾液腺・涙腺に限局した自己免疫病変の誘導が可能であることからヒト原発性シェ-グレン症候群(SS)のモデルマウスとして報告がなされた。唾液腺浸潤リンパ球の主体はCD4陽性陽性T細胞であり、少数のCD8陽性T細胞、B220陽性B細胞、Mac-1抗原提示細胞を混えていた。自己免疫病変を発症するマウス血清中にはIgG型の高力価の抗唾液腺導管上皮自己抗体が検出されることが間接蛍光抗体法にて判明した。このモデルマウスにおける自己免疫性唾液腺炎のエフェクター機構が分子病理学的に詳細に解析され、自己免疫性唾液腺炎の病態形成には各種サイトカイン(IL-1β,TNF-α,IL-2,IFN-γ,IL-10,IL-12p40)、細胞接着分子(ICAM-1,LFA-1,CD44,Mel-14)の発現異常が密接に関与していること、腺組織破壊に直接関与するCD4陽性T細胞が限られたレセプターVβ鎖(Vβ8)を有するT細胞クロノタイプであることが明らかにされた。また、末梢におけるトレランスの破綻が明らかにされ活性化された自己反応性T細胞が唾液腺臓器特異的な自己抗原を認識している可能性が強く示唆された。MRL/lprマウス自己免疫性唾液腺炎から分離した浸潤リンパ球を調整し、SCIDマウス腹腔内へ移入することにより自己免疫病変のトランスファーが成立する実験システムを用いた実験的治療によりin vitroにおける抗CD4,抗Vβ8抗体、抗ICAM-1/LFA-1抗体投与による発症阻止効果が明かとなり、将来的な臨床応用の可能性に期待が持たれた。
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