研究概要 |
本研究において,骨芽細胞が破骨細胞の形成や活性化においていかなる機序で生物学的な制御を行うかを検討した。実験においては1)破骨細胞形成系としてマウス長管骨由来骨髄細胞 2)多核細胞形成系としてマウス脾臓細胞 3)骨芽細胞様細胞として株化骨芽細胞MC3T3-E1細胞を各々用いて以下の結果を得た。 1)骨芽細胞を3日間培養して得られた培養上清は多核細胞の形成を抑制した。60日間培養して得られた培養上清は多核細胞形成の促進および抑制効果が見られた。これらの効果はインドメサシンで抑制された。また,骨芽細胞の培養上清中にはGM-CSF様蛋白が存在していた。 2)骨髄細胞においてTGF-β1は骨吸収活性を抑制したが,1α,25(OH)2D3が存在する際には破骨細胞形成を促進した。しかし,脾臓細胞由来の多核細胞形成系では1α,25(OH)2D3で誘導される多核細胞形成促進はTGF-β1によって抑制された。さらに,TGF-β1で処理した骨芽細胞の培養上清は多核細胞形成を促進した。 3)濾法型H^+-ATPase inhibitorであるbafilomycin A1はcarbonic anhydorase II inhibitorであるacetazolamideとともに副甲状腺ホルモンで促進される骨吸収を抑制した。一方,bafilomycin A1はプロカテプシンLの産生には効果を及ぼさなかったが,cetazolamideはその産生を抑制した。 以上の結果より,骨芽細胞はprostaglandin E2,GM-CSFおよびTGF-β1等のカルシウム調節因子を産生し破骨細胞の形成及び活性化を調節していること,破骨細胞のプロトンの産生と放出は破骨細胞の活性化を調節していることが示唆された。
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