研究概要 |
ヒトのヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)遺伝子について上流6Kbから下流1Kbまでの領域に,ルシフェラーゼをレポーターとしたアッセイ系で肥満細胞あるいは好塩基球特異的な領域が見出せなかった.そこで,DNase I高感受性領域をゲノムDNAブロット法で探したところ,プロモーター領域に肥満細胞,好塩基球特異的な高感受性領域が見出された.このことからプロモーター領域はクロマチン構造がほどけてトランスの因子が近づきやすい構造になっている事が予期される.また,この領域内ではHDCを発現していない細胞において,シトシンのメチル化が起きていた.従って,ヒトHDCの発現の細胞特異性はトランスの因子よりもむしろクロマチン構造やメチル化が関係していることが判明した. 一方,マウスHDC遺伝子は上流1099塩基とルシフェラーゼの融合遺伝子を用意し,マウス肥満細胞株P815にStableに導入した.私たちは1996年にP815細胞におけるHDCの誘導機構について報告しており(J.Biol.Chem.271,28439-28444,H.Ohtsu et al.),誘導系をすでに確立している.その後,IL-10がP815におけるHDC誘導を引き起こす事も見出しているため,今後はこの誘導におけるシス・エレメントの解析を先のStable transformantで行なうとともに,種々の薬剤の影響などを解析していく.また,更に上流のサブ・クローン化も進めており,上流におけるシス・エレメントの解析も可能となるはずである.このように,薬剤スクリーニングの簡素化を目的とした融合遺伝子の導入細胞は,マウスはクローン化までは終了したものの,ヒトはクローン化の最中である.
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