研究課題/領域番号 |
07557196
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
医化学一般
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡山 博人 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40111950)
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研究分担者 |
神野 茂樹 東京大学, 大学院・医学研究科, 助手 (10251224)
永田 昭久 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (50155933)
村上 浩士 東京大学, 医学部, 助手 (80262020)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
1997年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1996年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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キーワード | 分化 / 増殖 / 分裂酵母 / stel1 / 接合 / RNA接合蛋白 / stell / RNA 結合蛋白 / 機能相補 / cDNAバンク / 選択マーカー / 分化制御 / 異種生物間遺伝子相補クローニング / iF2α / 細胞周期 / Res2 / S期開始 / 蛋白質リン酸化酵素 |
研究概要 |
分裂酵母を実験的に再構成する生きた試験管として使用する標的細胞機能として、特に分化の開始機構の解明に力を入れている。これまでに、四種類の新規分化制御因子を分裂酵母で同定した。一つは、Phh1と名付けたストレスシグナルを伝達するMAPキナーゼで、この遺伝子は、分化誘導に必須な転写因子であるStel1の発現ないしその活性を制御する因子である。Phh1の哺乳動物のホモローグはすでに同定されているp38キナーゼで、リンパ球のストレス応答と増殖・分化に関与していることが知られている。第二は、Rcd1と名付けた遺伝子で、窒素源枯渇によって誘導される分化に必須である。解析の結果、分化開始に必須なStel1の転写に係わる因子で最も注目すべき点は、この遺伝子の構造ホモローグが、出芽酵母、線虫、植物、ヒトに存在する。第三は、Nrd1と名付けた遺伝子で、RNA結合蛋白をコードする。前二者と異なり、分化開始を抑制する制御因子である。解析の結果から、この因子の役割は、細胞が十分な栄養飢餓に達するまでStel1によって誘導され、接合と減数分裂に必須な遺伝子の発現制御を行うことによって分化の開始を阻止することと考えられた。興味深いことに、この因子にもRod1と名付けた哺乳動物の機能ホモローグが存在する。巨核球に分化するK562ヒト血球細胞株にRod1を高発現させると、酵母と同じように発現量依存的に巨核球への分化を阻止する活性を示す。成熟ラットの各臓器での発現量は、脾臓、腎臓で多い。第四は、Srw1と名付けた遺伝子で、WD反復配列を7個持つ蛋白をコードする。この遺伝子の破壊株は、完全な分化不能、栄養源飢餓時のG1、G2期停止不全等の多彩な形質を示す。分化不能は、Cyc17-Cdc2キナーゼ複合体がその標的であることが判った。G1、G2期停止不全は、細胞分裂開始サイクリンCdc13の分解が起こらないことによる。以上の結果から、Srw1は栄養源飢餓、すなわち分化刺激に応答してCdc13の分解を促進し、細胞周期を停止させると共に、Cyc17-Cdc2を抑制し分化開始の阻止を除去することによって、分化開始への切り換えを行うものと考えられる。 以上述べたように、分裂酵母の分化開始制御機構の全貌が少しずつ見え始めた。さらに、今後高等動物のホモローグ遺伝子の機能同定が進めば、複雑な哺乳類の分化制御機構の解明に突破口が開かれるものと期待される。
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