研究分担者 |
河田 純男 大阪大学, 医学部, 助教授 (90183285)
門田 守人 大阪大学, 医学部, 教授 (00127309)
船越 洋 大阪大学, 医学部, 助手 (40273685)
松本 邦夫 大阪大学, 医学部, 助教授 (90201780)
根本 康夫 大阪大学, 医学部, 助手 (30250088)
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研究概要 |
癌細胞の浸潤・転移能といった悪性形質は癌細胞とそれを取り囲む宿主間質細胞との相互作用によって付与されていることが知られている.HGFならびにそのレセプターであるc-Metを中心に癌-間質相互作用を解析した結果,HGFならびにHGF誘導因子を介した局所的な癌細胞と間質細胞の相互作用こそが癌-間質相互作用による癌悪性化の分子機構の一端を担っていることを私たちは明らかにしてきた.この様な観点からHGFの作用を特異的にブロックするアンタゴニスト分子の創製は新しい浸潤・転移抑制剤開発の可能性を開く有意義な研究テーマである. まず私たちはリコンビナントHGFのエラスターゼ限定分解産物よりHGFのc-Metレセプターへの結合を競合的に阻害し,その生物活性をほぼ完全にブロックするアンタゴニスト分子の精製に成功し,HGF/NK4と名付けた.in vitroにおいて様々な癌細胞がHGF刺激に応じてマトリゲルやコラーゲンゲルへの浸潤能を獲得することが知られているが,HGF/NK4はその浸潤活性をほぼ完全にブロックすることができた.さらにin vivoの実験系においてHGF/NK4の癌悪性化に対する効果を検討した.ヒト胆嚢癌由来細胞GB-dlをヌードマウスの皮下に移植し,腫瘍組織近傍にHGF/NK4の持続投与を行なった結果,HGF/NK4投与群では腫瘍の成長が著しく抑制され,宿主の正常間質組織への浸潤もほとんど認められなかった.さらにがん転移モデルとして汎用されるLewis肺癌その他の癌細胞を用いて同様の実験を行なったところ,やはり腫瘍の成長を顕著に抑制し,その肺・肝転移をほぼ完全に抑制するこに成功した.以上の結果はHGF/NK4が癌浸潤・転移抑制剤としてきわめて効果的であることを示しており,新しい制癌剤としての可能性を示唆するものである.
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