研究概要 |
本研究では、日本住血吸虫のゲノム解析として、染色体顕微切断法及びPCR in situ hybridization法(PRINS)を用いた。染色体顕微切断法は、視覚的に捉えた染色体特定部位を顕微鏡下で物理的に掻き取った染色体断片のDNAを、PCR増幅後、蛍光 in situ hybridization法(FISH)で産物の特性を解析する方法であるが、今回この方法を用いて日本住血吸虫および中間宿主貝の染色体解析を行なった。まず、日本住血吸虫の第1染色体の短腕・長腕、第2染色体全体(SJ2)、ZW染色体のDNAを回収し、FISH解析を行ったところ、第2染色体全体SJ2の産物だけが全染色体のテロメア領域にハイブリダイズした。また、中間宿主貝では、Oncomelania hupensis貝(日本住血吸虫の中間宿主)の第1、第2染色体及びRobertsiella sp.貝(S.malayensisの中間宿主)の染色体標本からY染色体と第1染色体からそれぞれDNAを回収し、FISH解析したところ、PCR産物の半分が全染色体に強いシグナルを示した。次にPRINS法は、特定DNAのプライマーを用いて染色体上でPCR増幅し、その鋳型DNAの物理的位置を決定する方法であるが、本研究では、ヒトのテロメア配列(TTAGGG)7をプライマーとして、住血吸虫4種、マンソン住血吸虫(SM),ビルハルツ住血吸虫(SH),日本住血吸虫(SJ),シネンシウム住血吸虫(SS)のテロメア配列の物理的位置を検出した。その局在性から、4種は以下の3タイプ(a,b,c)に類別された:(a)全末端:SJ,SS、(b)全末端とセントロメア、W染色体のヘテロクロマチン:SM、(c)全末端とW染色体のヘテロクロマチン:SH。以上のように、本研究で、一応の技術が確立したが、今後両方法を用いて住血吸虫および宿主貝のゲノム解析に向けて本格的に適用していきたい。
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