不整脈、心不全そして切迫仮死を持つ胎児にとって、胎児心電図や胎動がモニターできれば診断・治療に非常に有用です。そこで、非侵襲的に胎児の生体電位が測定できる装置を試作した。胎児の生体電位を測定した結果、母体の腹壁からの誘導では(1)電極が胎児に接着していないために、電位が充分記録できない、(2)胎児が母体の中で大きく動きドリフトする、(3)母親の心電図が混入する、(4)母親の腹壁の呼吸運動および骨格筋の電気信号が雑音として影響する、(5)単に感度を上げただけでは静電位などの雑音と胎児生体電位との判別ができない、などの問題が判明した。現在、これらの問題点を最小限にするために雑音を最も減弱しかつ胎児心電図の電位を減らさない電極および誘導法を明らかにした。すなわち、Ag/AgCl電極を用いた双極誘導で母体の脊柱と腸骨上窩の間であった。さらに、低周波帯域フィルター2.0Hzおよび高周波帯域フィルター30Hzが胎動や呼吸によるドリフトが少なくかつ生体電位の減衰が少ないフィルター条件であることを明らかにした。なお、母親のQRS波にトリガーした加算平均心電図の利用は母親の心電図を削除するのに有用であった。 今後、電気信号における母親のわずかな呼吸性変動を除くために、母親の心拍でテンプレートをかけ、加算平均し、上限減衰を行う。また、新しいコンピユーターソフトで、積分増幅装置を作成し、胎児と母親との電位差を4倍から1000倍以上に増幅され目的とする胎児生体電位測定装置を開発したい。
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