研究概要 |
予後の前向き試験に関しては切除肺癌患者・乳癌患者・膵臓癌患者・大腸癌患者を中心にして,集積につとめてきた.現在,204例の肺癌患者,108例の乳癌患者,29例の膵臓癌患者,91例の大腸癌患者の集積をみた.手段としては,切除標本からのウエスタンブロット・quantitative RT-PCR・凍結切片による免疫組織学的検討を行った.これらの一致率は,ほぼ85-90%で,いずれの評価法でもよいと考えられた.現在の所,肺癌ではMRP-1/CD9の減弱率は42.3%で保持率は57.7%であった.overall survivalは減弱群が,25.9%で保持群は57.6%と有意に(p=0.0001)減弱群の予後が悪くなることが裏付けられた.また,乳癌では減弱率・保持率はそれぞれ,33.0%・67.0%でoverall survivalは25.9%と57.6%で,無病率では,減弱群が67%であるのに対し,保持群が85%と有意いに(p=0.0005)減弱群の予後が悪いのが判明した.また,膵臓癌では,減弱率が48.6%,保持率が51.4%と減弱群が多く,悪性が高いのと,相関すると考えられた.いずれのoverall survivalも非常に低いので1年生存率で検討したところ,減弱率は0%・保持群は25.8%とやはり有意に(p=0.0015)減弱群の予後が悪かった.85例の大腸癌では,減弱率が24.7%.保持群が75.3%を占め,現在の時点では,overall survival・無病率ともまだ,有為な差は認められていない.また,MRP-1/CD9の構造分析も併せて行ってきた結果,蛋白合成後の糖鎖による修飾では,一定の糖鎖の付加は認められなかった.cDNAからのDNA sequencingでも特にその機能に影響を及ぼすようなpoint mutationは発見できなかった.以上のことから,MRP-1/CD9の発現以上の主体は,プロモータ異常であると考えられる.現在,プロモータ領域のクローニングを施行中である.
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