研究概要 |
ヒト血液中の活性型ビタミンD_3〔1,25(OH)_2D_3〕を測定することは,骨粗しょう症の確定診断上で極めて有用である.現在,その測定は主としてradioreceptor assay (RRA)により行われているが煩雑な前処理を必要とするなど種々の問題を有している.そこで,我々はその解決にimmunoaffinity chromatography (IAC)を導入した.まず,固定化に用いるligandとして測定対象に極めて特異性の高い抗体の調製を企てた.すなわち,従来から抗D_3代謝物抗体の調製は種々試みられているものの,いずれも化合物自身の有する官能基を利用して蛋白質と結合させたハプテン-蛋白質結合体を免疫原としたものである.そのため,得られる抗体の特異性が低く,診断薬等への適用は困難であった.我々は,D_3代謝物に特徴的な官能基と離れた11位に着目し,約20工程を経てここを結合部位とする免疫原([C-11α]ハプテン)の合成,さらにこれを用いて極めて特異性の高いポリクローナル抗体の調製に成功した.本抗体は従来の抗体のみならず,汎用されているレセプターの特異性をも凌駕する優れたものであり,本抗体をligandとしたIACは十分満足し得るものであつた.さらに,開発したIAC/RRAシステムを実試料へ適用しその有用性を明らかとした.また,本免疫原を用いほぼ同様の性質を有するモノクローナル抗体の産生にも成功しており,これにより品質一定のligandを有するIACをほぼ半永久的に供給でき,キット化された骨粗しょう症診断薬への途も拓かれた. これらとは別に,HPLCによるD_3代謝物分析法の開発も企て,ヒト血中における25(OH)D_33-sulfateの存在を明らかとすると共に定量法を開発するなど優れた成果を挙げた.
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