研究概要 |
目的は経静脈投与により左心系が造影される造影剤の開発である.特に左心腔のみならず,心筋潅流の評価が可能な造影剤開発が最終目標である.一般に末梢静脈より投与された超音波造影剤は循環中に希釈されるため,左心系で十分な造影効果を得るためには,循環途中での微小気泡の消失を阻止する必要がある.それ故,その基剤となる薬剤としては,難溶性で,微小気泡化させた後の寿命が長いと予想される弗素化合物を用いた.今回の検討ではドデカフルオロペンタンを用いた.微小気泡化する手段として,単純なマイクロフィルターを介する方法,注入用注射筒をポッピングする方法,さらに既に我々が開発した手法(平成3年度科学研究費補助による)の超音波撹拌法を用いた.これによると,2〜10ミクロンの大きさの微小気泡が多数生成されていることが顕微鏡下の検討で分かった.これを用い,イヌを対象として静脈内投与すると右心系のみならず左心腔までが明瞭に造影され,その持続時間も従来我々が作成してきた超音波撹拌ヒトアルブミンを用いた超音波造影剤よりも著しく長く,臨床的価値が高いと予想された.さらに,本造影剤により心筋にも染影が見られ,心筋潅流状態の評価にも用いうることが示されれた.なお,作成方法による微小気泡の濃度,粒径分布,さらに本剤による血行動態作用などにも検討を加えた.
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