研究概要 |
我々は水槽中を自由に遊泳する金魚の位置座標を,CCDカメラ2台(上方及び側面),インターフェイスである画像入出力ボード2枚を通してパソコン入力し,その行動軌跡を長時間に亘り,リアルタイムで表示する装置を開発した。更に金魚の行動を自動的に定量化するため,移動速度,存在分布,左右回転比(時間当りの右回転,左回転,直進のイベント数),上方から見た体軸の傾き等のヒストグラムを作成した。この行動解析プログラムを用いて正常金魚と片側視神経切断金魚とで比較した。視神経切断直後から7〜10日間,金魚は正常とは異なる遊泳パターンを生じた。正常では左右の回転比が同じであったが,視神経切断金魚では,切断側とは反対側(正常の視神経側)への回転が約2倍と増加した。この回転異常はその後ゆっくりと回復しほぼ3〜4週で左右の回転比が同一に戻った。また視神経切断直後より,金魚の体軸は無傷の視神経側に大きく傾き,切断10日以降ゆっくりと回復し約30〜40日で垂直に戻った,これらの結果は,切断した視神経が20〜40日の経過で回復再生することを示唆する。そこで,トレーサーであるHRPを眼球内に注射し視蓋への視神経終末の再出現パターンを観察したところ,約3週間で終末が見られ,その後約30日で正常投射パターンに復した。以上の結果から金魚の視神経再生が行動学的にも形態学的にも確かめられた。本装置により従来計測不可能だった魚の行動解析の自動定量化に道を開き時間や人の節約に大きく貢献できた。今後,様々な用途に応じた行動パターンのアルゴリズムを開発し,神経行動学や関連分野の益々の発展に寄与したいと願っている。
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