研究概要 |
1.システムの設計と試作:動的負荷装置と組織培養チャンバーの設計と製作を行い,それらを組み合わせて動的負荷環境下生体組織培養システムの試作を行った。動的負荷装置には繰り返し位置を決め精度の高いリニアアクチュエータを使用した。同時に4つの組織が取り付け可能であり,また,各組織に加わる荷重はロードセルによりそれぞれ経時的に計測可能とした。培養チャンバーはアクリル二重槽とし,内槽の底部に培養皿を設置し,外槽と蓋には恒温槽から37℃の温水を循環させ,また,チャンバー内に加湿した37℃の95%Air+5%CO_2混合ガスを供給することにより,チャンバー内の湿度,培地の温度およびpHの維持を可能にした。本試作装置により,培養状態で組織に加わる負荷が計測可能となった。 2.システムの性能評価:モデル組織として,直径約300μmの家兎膝蓋腱コラーゲン線維束を静的負荷環境下で培養し,基本性能を評価したところ,2週間の培養維持および経時的な負荷の計測が可能であった。 3.装置の改良:当初,培養皿および線維を把持するチャックはアクリル製であったが,コンタミネーションの防止上ポリカーボネートに材質の変更を行い,良好な結果を得た。 4.静的負荷試験:家兎膝蓋腱コラーゲン線維束に,チャック間距離の約2%の初期変位を与えて静的負荷環境下で1, 2週間培養し,それらの力学的特性の変化を調べたところ,引張強度および接線係数は培養1週間後には低下するが,2週間後には元の組織レベルにまで回復することが分かった。また,培養中に作用する負荷応力の時間和が増加するにしたがって強度が増すという知見を得た。 5.動的負荷試験:家兎膝蓋腱コラーゲン線維束に,1日1時間だけチャック間距離の約2%の変位を4Hzで与えながら1, 2週間培養し,それらの力学的特性の変化を調べたところ,引張強度および接線係数は培養1, 2週間後ともに元のレベルを維持し,生体内で線維束に作用するピーク応力の約半分の応力を作用させると線維束の引張特性が維持されることが分かった。また,短時間の負荷でも動的負荷は機能維持に有効であるこどが示唆された。
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