研究概要 |
歩行中の床反力の測定から何時どの方向に滑り易いかを調べ,足底圧分布の測定により滑り易い時の接触状態を特定して,すべり止め材を設置するという流れでシステムを構築した.この中で床反力データから何時どの方向に滑り易いかを調べるために接線力比と接線力方向を定義しベクトル軌跡として表示するプログラムを作成した.その測定結果から,特に踵接地時がすべり易いことと,すべり方向が立脚期間通して-定していないことが判った.また,靴底圧分布から,健足あるいは利き足では踵接地から爪先離れまで滑らかに接地部分が移動するのに対して,患足では段階的に変化,あるいは「踵立ち歩行」のように鍾部分のみで力を受けている状況が明らかになった.すべり止めの設置方法は,基準となる圧力を設定し,その圧力より高い部分に,凍結路面に有効なガラス繊維を混入したすべり止めを用い,圧力の低い靴底外周部には,積雪路面に有効なピラミッド状突起を配列した生ゴム系のすべり止めを用いた.加えて,実在の障害者用靴底には,踵接地時のすべりを防ぐために必要最低限度のスパイクを用いた. 上記システムにより健常者の靴底,装具を用いた右足関節固定の障害を想定した障害者用の靴底,加えて両足関節を固定した実在の障害者用靴底を試作した. なお,すべり止め効果を評価するため,試作した靴に対して5段階評価の官能検査を実施した結果,概ね良好な成績が得られた.しかし障害者の場合,多種多様な路面状況となる実際の生活道路を歩いたこともあり明確な効果を判定できなかった.現在歩行中の加速度を測定することにより歩行動作およびすべり現象と加速度変化の対応関係を調査している段階である.足部の加速度波形の観察からすべりの判定判別が可能となったが,加速度測定によるすべり止め効果の数量的評価を行うまでにはいたっていない.
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