研究概要 |
膵全摘出犬をレシィピエントに用いてバイオ人工膵臓の有効性評価を行うとともに臨床応用時に生じる問題を明らかにすることを試みてきた。 同種移植:犬-犬同種移植へのマイクロカプセルタイプのバイオ人工膵臓の適用実験を行った。雑種成犬より分離した膵ランゲルハンス島(ラ島)をアガロースマイクロカプセル化することでバイオ人工膵臓を作製した。ビ-グル犬の膵臓を摘出して糖尿病とした。膵全摘出犬の大網ポーチ内に体重1kgあたり4,300〜18,000個のハイクロカプセル化ラ島を移植したところ、インスリン注射なしで血糖値を4,4,28,42,49日間正常化させることが出来た。 異種移植:補体消耗能を有する高分子をアガロースマイクロカプセルに添加することで、マイクロカプセル化ラ島が異種動物内で長期間生存し、血糖値を長期間正常化させることが可能であることをハムスター-マウス間で実証してきた。さらに、プタラ島単離技術を有する奈良県立医科大1外科へ、同カプセル化材料を提供し、マイクロカプセル化ブタラ島の膵全摘出犬への移植を行ったところ、血糖値正常化期間は、14,42,89,99日であった。 マウスやラットでバイオ人工膵臓の有効性を実証した研究は現在までにも多く報告されてきたが、体重また免疫系がヒトに近い犬をレシィピエントとした実証研究はいままでほとんどなかった。上記したように、この研究で、血糖値正常化期間が数十日ではあるが、バイオ人工膵臓で糖尿病犬の血糖値のコントロールが行えることを明らかにできたことは本研究のもっとも重要な成果であり、バイオ人工膵臓の臨床応用の可能性を示唆するものであると考える。 本研究で、大量ラ島分離用媒体の開発、マイクロカプセルの免疫隔離機構の研究、新たなバイオ人工膵臓作製素材の検討等の研究を行った。これらについては発表論文を参照していただきたい。
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