研究概要 |
本研究は着衣時の温熱生理学的解析が可能な直接カロリメーター(熱量計)を開発し、実用化を目的として行った。本年度は、熱流センサーの感度向上のため、扉部分を改良した。熱流センサーの無い扉部全面に厚さ2cmの断熱材を貼付し、扉部の腕挿入口には、厚さ10cmのスポンジにより完全に断熱した。熱量計内に留置したヒーターの発熱による校正を、人工気候室温(Ta)22、28、34℃の3種と、熱量計外殻部温(Tw)22、28、34℃の3種を組み合せて行った。その結果、ヒーターの発熱量(watt)に対する熱流センサーからの出力(mv)の関係を示す回帰直線の傾き(mv/watt)は、Ta=22,28,34℃条件で各々0.30,0.31,0.31であった。また、Tw=22,28,34℃条件では各々0.31,0.30,0.30であり、いずれの条件でもほぼ同一であった。この装置を用いて、被験者による実験を行った。環境温22℃、相対湿度45%にて、座位安静の成人女子6名(平均身長158cm、平均体重50kg、平均体表面積1.45m^2)を被験者とし、異なる着衣条件での手腕からの熱放散量を測定した。着衣条件はA条件:半袖Tシャツ、スパッツ、下着、靴下、スニーカー、B条件:A条件+長袖トレーニングウェア上下、C条件:B条件+手袋(軍手)とした。手腕からの熱放散量は、着衣条件A、B、Cそれぞれ3.2、6.6、7.4Wであった。着衣量が増すと手腕部からの熱放散量がほぼ比例した増加を示し、皮膚血流量の変化とも同期した。本研究で開発、実用化を目的とした、着衣時の温熱生理学的解析が可能な直接カロリーメーター(熱量計)は所期の目的を達成した。
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