研究課題/領域番号 |
07610012
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
中国哲学
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
吉永 慎二郎 秋田大学, 教育学部, 助教授 (70240330)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1997年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
1996年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1995年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 萬民系墨家集団 / 墨家の成立と展開 / 孟子の思想形成 / 仁義と王道 / 諸侯称王と聖王思想 / 左伝の命と墨家の非命 / 儒墨闘争 / 戦国思想史 / 聖王 / 光王 / 左伝 / 称夏王 / 魏 / 非命と革命 / 仁義 / 天と性 / 墨家 / 孟子 / 聖人 / 詩 / 書 / 出土全文資料 |
研究概要 |
本研究は平成七・八・九年度の三年間に渡る補助金の支給を受けて遂行され、次のような新たな知見を得るに至った。 1、孟子に直接的な思想的影響を与えた墨家集団を"萬民系墨家集団"として把握し、そのテキストをほぼ同定し得たこと。そしてこれを踏まえて、この萬民系墨家が齋地を中心として活躍した墨家(齋墨)であることを明らかにした。そのうえで渡邊卓氏の穿孔研究の批判を行い墨家の十論各編の成立年代推定表を提示している。2、萬民系の墨家のテキストを中心に用いられる「聖王」「仁義」「王道」「先王之道」などの用語は孟子に受容され、孟子はこれらの用語を自説の展開に巧みに用いたことを明らかにした。このことはさらに次の二点に整理し得る。(1)、孟子の中核思想である「仁義」や「王道」「先王之道」も、先行する墨家思想の刺激と影響なしには形成せれ得なかったこと、仁義を併称するのは墨家に出ずることが明らかにされた。(2)、孟子の「聖人」の概念の展開は墨家の「聖王」の概念を媒介としてなされていることが論証された。3、孟子の民本思想には墨家の<天ー聖王ー満民>の満民思想の影響が見られること。しかしながら孟子は「萬民」の用語を避けて「民」の語を専ら用いて独自の民本思想を展開していること。4、墨家の聖王思想は前四世紀後半の戦国諸侯の「称王」という周の支配原理を否定する挙を理論的に正当化する役割を担うものであったことが解明された。したがってこの「称王」の後に活躍する孟子の王道論が墨家の聖王思想の影響を被るこは歴史的状況からも避けがたいことが明らかとなった。5、「左傳」の資料性の検討を踏まえて、その記述から周の秩序規範として「命」が作動していたことを明らかにし、これに対して墨家の聖王思想の基底にある「非命」はこの周の「命」を否定する思想であることが解明された。そして思想史的には孟子の役割は墨家の「非命」に対して再び「命」の思想を正当化せんとするものであったことが明らかにされた。 以上の成果をふまえての今後の課題は、儒墨の思想史的交渉という視点を十分に踏まえた戦国思想史の斬新な再構築であると考える。
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