研究概要 |
中国の明代において、浙江地方出身の職業画家を中心に勢力を張った画家集団、浙派は道教的主題の作品を大量に残しており、当時の道教教団との関わりが注目されている。 本研究は、この浙派を主に道教的主題の絵画作品に関する資料を収集・分類し、その図像内容・様式展開を明らかにする一方、明代の宮廷および民間における道教信奉の形態と画家の活動状況に関する資料を収集して、道教的主題の絵画制作の背景を把握するという二元的かつ総合的な研究作業により、従来不明であった明代道教と浙派絵画との関係の全体像を明確に提示しようとするものである。 全体を二年計画とし、一年目にあたる七年度は以下のような資料の収集を行った。 1,明代の浙派を中心とする道教的主題の絵画作品の資料収集 (1)実作品の調査・撮影 調査先:個人所蔵家(兵庫・京都)、大和文華館(奈良)、東京国立博物館 (2)江戸時代縮図および売立て目録の調査 調査先:東京国立文化財研究所 2,明代の道教と絵画・画家の関係を裏付ける資料の採集 参考図書:『明実録』・『明史』等の史書、『古今図書集成』等の類書、『道蔵』等の道教関係書、画史・文集・方志 八年度は、これら収集資料の整理・分析を行い、おのおの以下のような成果を得た。 1,(1)では、浙派系画家による道教的主題絵画作品において、朱邦等の画家の新資料を発見し、劉俊、張路、陳子和等、代表的画家の明確な作風基準が得られた。(2)では、主として各所に分蔵される探幽縮図から道教的主題の作品を抽出し、八仙、寒山、拾得等、中国民衆に親しまれた神仙像の図像展開を捕捉するとともに、この方面での浙派画家の旺盛な制作活動を確認できた。 2,では、主に明代中期の正一教と南京貴族および浙派画家との関係、明代後半の商人層の道教信奉と浙派画家の制作活動との関連等について新知見が得られた。
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