研究概要 |
本研究は,色の進出・後退の現象を,刺激の明るさと色に焦点を当てて,対象のパターンとの関連で扱うこととする。つまり,色の進出・後退の現象を通して,形態視における明るさ・色の知覚の役割について検討を加える。今回の実験全体を通して得られた結果は以下の通りである。 1.個人差はあるものの,一般にいわれるように同色であれば輝度の高い方が進出する可能性が高いと考えられる。 2.基本になる刺激を連続的に繰返すことによって,色の進出・後退現象はより顕著に感じられる。繰り返す場合は,太い線分ほど視野の外側まで標準刺激と比較刺激の「見え」の奥行き間の差が感じられる。 3.一般に進出色といわれる色相でも被験者により後退色に感じられたり,後退色といわれる色相でも進出して感じることがある。同じ被験者でも時間的に進出・後退の効果が反転することがある。 4.垂直線分を刺激とした場合には,標準刺激と比較刺激の距離が2゚〜4゚である場合に色の進出・後退の効果が最も強くなる。また,水平線分を刺激とした場合には,標準刺激と比較刺激の距離が1゚〜2゚の場合に色の進出・後退の効果が最も強くなるという傾向が見られた。 5.手前に配置される「図」として白と黒の2種類の図形が配置された場合,その背後に「地」として有彩色を配置することにより,「図」である白と黒の図形の間に見かけの奥行き間の違いが生じることが明らかになった。また,その背景色の輝度が低いほど,「図」である2つの図形の見かけの奥行き間の違いは大きく感じられる。 なお,本研究は,平成7年度・平成8年度基盤研究(C)(2)『中心視と周辺視における色と形の知覚の特性』(研究代表者:日比野治雄;研究課題番号:07610066)と表裏一体を成すものである。
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