本研究は、注意の2つの制御のあり方(突然の視野内の変化による注意の自動的奪取と意図的能動的注意のコントロール)がそれぞれ視覚情報処理に異なる仕方で影響しているのではないかとの仮定にたち、それぞれを純粋に独立して取り出すことを試みた。 平成7年度は、自動的注意の影響を調べる目的で、ノイズ刺激による反応時間の干渉効果を利用した実験を行った。ノイズ刺激は、通常はターゲットと同時かあるいは比較的短い時間ターゲットに先行して提示されるが、ここでは、2秒という長い先行時間で提示し続ける。すると、干渉効果はほとんど消失することが申請者の過去の研究から分かっている。この消失した干渉効果を、ノイズ刺激の上下に自動的注意を奪取すると考えられる手掛を提示することで、復活できるか否かを見た。結果は、確かに干渉効果の再現が見られたが、この効果は、ノイズと手掛が同一視野内でなくてもよく、注意を奪取したというより、むしろ、突然のonsetがもたらす覚醒効果によると解釈された。 平成8年度は、能動的注意の効果を可能な限り純粋に取り出して実験する予定であったが、その予備実験の過程で興味深い観察結果を得たので、急遽実験内容を変更して、この実験を行った。その現象とは、ノイズ刺激の中に埋もれたターゲットが、能動的に注意を向けると、数秒で消失するというものである。組織的に実験を行った結果、実際に注意を向けた側が向けなかった側よりも消えやすいことが見出された。この点についてはさらに提示条件を工夫して現在追加実験を行っているところである。
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