研究概要 |
双安定的な仮現運動を生起させる刺激図形として、ターナス(1938)の刺激形態(3本の光線よりなる2つのフレーム)を用いて基礎的データを収集し、それにもとづいて仮現運動の機構に関する理論的解明へ手がかりを得た。1本の光線の大きさは幅24′×高さ1.3°で、3本の光線より構成される1フレームの大きさは幅2°×高さ1.3°であった。第1フレームと第2フレームとの位相を0,50,100%と3条件を設定し、1フレームの持続時間を25,50,100,400msecと変化させ、さらに2フレーム間の間隔時間(ISI)を5より165msecまで変化させて双安定的仮現運動の出現率を測定した。被験者は本研究の実行者および大学生であった。 位相を0と50%の条件下では、「グループ運動」(3本の光線が1パターンとなって全体として左右に動いてみえる現像)の出現確率はISIの増加関数となり、その関数形はS字形をなすという目新しい知見を得た。そのため、出現確率をZ-変換してISIに対してプロットした。予想されるように、Z vs ISI曲線は直線によってうまく適合した。また、位相を100%の条件下では、「グループ運動」の出現はISIの変化とは独立であり、現象は常にみられた。 これらの知見から、レィチァード運動検出器モデルを構成する時間的フィルターは、ガウス関数的であることが推測され、さらに演算操作は必ずしもレィチァードによって仮定された減算の形式でなくてもよいことが明らかになった。
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