研究概要 |
方法 腕の2部位(手首と肘)のそれぞれに1対の電極を貼付して,各対に与えた2組の電気パルスの提示時間とISOI(Interstimulus Onset Interval)を変化させて,最適な運動感覚が生じる刺激条件を決定した.電極を腕に貼付した後,まず肘電極に200msecの電気パルス(各パルスの時間2msec,ISOI,10msec)を流し,はっきり知覚できるが痛くない程度の電流を決定した.ついで,この刺激と同じ主観的強度を与える手首の電流を設定した. 各電極対に流す刺激の長さは,20,50,100,200,300,400msecとし,最初に手首側それから肘側に流す場合と最初に肘側それから手首側に流す条件とを設けた.手首側の刺激と肘側の刺激のISOIはOmsecから20msecステップで上昇させ500msecまで大きくした.各ISOIに対して被験者は,2部位の刺激が,1)同時に刺激されたか,2)時間的にずれて別々に刺激されたか,3)2部位の間に運動が生じたかどうか報告した.また運動が感じられたときにはその方向を述べた. 結果 1)刺激の提示時間が50msec以下のときは仮現運動が生じなかった.80%以上の被験者が仮現運動を感じるのは刺激の提示時間が100msecを越えた場合であった.2)刺激の提示時間が200msec以下の場合,刺激の提示時間が増大すると仮現運動が生じるISOIは130msecから230msecまで増大したが,刺激の提示時間が200msecを越えた場合,仮現運動が生じるISOIは,刺激の提示時間とは無関係にほぼ一定であった(約230msec).3)刺激を肘から手首の方向に与えた場合は,その反対方向に与えた場合に比べて,仮現運動の方向に関する判断が不正確であった.仮現運動の異方性が認められた.
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