研究概要 |
本研究は,三つの側面から行なわれた.すなわち,(1)微細表面粗さ認識が触認識システムの中でどのように位置づけられるかに関する理論的研究,(2)触覚系が刺激凹凸の振幅情報を用いて微細表面粗さ認識を行なっているとする「振幅情報仮説」の妥当性を検討する実験的研究,(3)微細表面粗さ認識の基本的特性を明らかにする実験的・理論的研究である. (1)については,文献的研究により触認識システムが4種類の下位認識システムから構成されるとの理論的推測を提出した.微細表面粗さ認識は,この下位システムの一つとして位置づけることができると考えられた.(2)については,「振幅情報仮説」が妥当であるなら,微小な段差の高さ弁別においても微細表面粗さ弁別と少なくとも同程度の弁別閾値が得られるはずである.そこで,微細な畝刺激とミクロン単位で制御可能な段差掲示装置を作成し,畝または段差の高さ弁別閾を測定した.その結果,高さ弁別閾は微細表面粗さ弁別閾より小さくなり、「振幅情報仮説」は支持されることになった.(3)については,まず微細表面粗さ弁別閾の空間的加重を求める実験を行なった.その結果,弁別に関与する皮膚機械受容単位の絶対数が弁別精度を決定していることが明らかとなった.これに基づいて空間加重現象を説明する神経計算モデルを作成した.次に,微細表面粗さ弁別閾の温度依存性を調べる実験を実施した.皮膚温度が変化しても微細表面粗さ弁別閾があまり変化しなかったことから,微細表面粗さ認識に関与する機械受容単位はFAIの可能性が強いと推定した.
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