研究概要 |
自閉症児(Kくん)のセラピーを2才から3才まで、合計38回施行し、それをビデオ録画した。セラピーは自閉症児に対する個別プレイセラピーと母親の養育相談であり、1回2時間を要した。研究はビデオテープを文章化したデータを分析し、愛着にかかわる母子の相互作用に焦点をあて考案した。 仮説:自閉症児はFrithの言う“断片化された世界"に生存し、それは予測期待の成立しない、一貫性のない世界であり、記憶することがその後の世界の理解に効果をもたない世界である。それゆえ彼らは世界の安定性を求めて常同行動(同じことの維持)に走り、安定しているとみなせる特定のもの(Kくんの場合ミニカ-)に執着する.それゆえ療育・セラピーは、初め、Kくんの母親が一貫した、安定した反応を示し続けることである。 (1)セラピー第一段階 母親は、同一性の保特・ミニカ-への執着が子どもの不安と恐怖のあらわれであることを認識し、対応を行える準備をする(母親への養育相談)そして、具体的に、子どもとのあそびを展開する中で、ミニカ-あそびが不安・恐怖の表現であることを理解した。加えて、子どもが感情表現できない現状にあることを了解して、安心感を得させるため、徐々に抱っこを導入する。当初抱っこは不安をもたらすものであったが徐々に安定をもたらすものに変化した。 (2)Kは徐々に感情表現が可能になり,電気掃除機に対する恐怖を表現し、加えてその時の母親の適切な反応・対応により,避難場所としての母親を認知するに到った。母という「他者」の発見と平行して,自己の要求に気づき,要求→満足過程の中で母との関係性を徐々に愛着的なものに変様させた。 従来自閉症児は愛着が成立し難いと云われてきたが,この原因の1つとして,子どもの感情表現の困難が考えられた。セラピーの中で、その子ども特有n表現を意味づけることができれば発達障害の改善が得られることが示唆された。
|