研究概要 |
本研究では人生移行期における自己同一性の確立・統合に向けての発達援助プログラムを作成することを目的に次の2つの研究を実施した。 1.青年期後期の人々を対象として,対人関係と自己同一性確立との関連をソーシャル・サポートという視点から検討した。大学生207名への質問紙調査と統計的分析の結果,「悩みごとについて話をする」,「気持ちや感情をわかってもらう」というような情緒面での安定に働きかける心理的サポートを経験していることが自己同一性確立にとって重要であることが明らかになった。 2.成人期にある女性を対象に,定期継続型のグループアプローチによる発達援助プログラムを試験的に実施し,その効果について検討した。研究参加者は29名で,病院,保健所,学校等で対人援助活動に従事する30代から40代の女性が中心だった。5回にわたるグループワークは,受容力のあるグループ形成をねらいとした作業と,カウンセリングの学習法の応用,自己理解の促進をねらいとした心理アセスメントから成っていた。多くの参加者はグループワークの内容そのものよりも,グループワークをとおして得られたグループからの受容感,評価されない人間関係,自己開示と内省の促進を効用として挙げていた。青年期後期に限らず,成人期の人々に対しても心理的サポートを受けられる集団,そして自己のあり方,対人関係のあり方について整理する場を提供することは,一種のモラトリアムとしてアイデンティティの確立・統合にプラスに働くことが示唆された。
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