研究概要 |
1.企業組織勤務者延べ716名を対象として,贈答行動の実態,贈答行動にともなう心理的貸借感,贈答行動の心理的機能に関する調査を4次にわたって実施した。(1)贈与と返報に関する意識30項目の調査結果から,「利他的行為への警戒性」「手段・債権志向性」「負債の感受性」「返報義務感」の4因子を抽出し,「債権・警戒性」尺度と「負債返報志向」尺度の二下位尺度からなる心理的貸借感尺度を構成した。(2)自己解釈図式尺度との関連では,独立的自己観尺度と債権志向性との間に負の,相互依存的自己観尺度と負債感受性および返報義務感との間にそれぞれ正の有意な相関を得た。さらに「負債・警戒性」と「自尊感情」,および「負債返報志向」と「義理尊重」の間にそれぞれ有意な正相関を得た。 贈答行動の実態として以下の知見を得た。(1)組織の人間関係には,冠婚葬祭などの事象付随型よりも中元・歳暮という習慣型の贈答が心理的貸借感の清算機能を果していることが示唆された。 (2)債務・警戒性高群は低群より同僚・部下への贈与頻度が低く,贈与に未来志向的メッセージを込める傾向が大であった。負債返報志向性高群が低群より貰った以上のお返しをする傾向を見出した。 3.大学生男女82名を被験者として,債権志向性の程度が報酬性勢力保持者に対する利他的行動の動機に及ぼす効果を実験的に吟味検討した。将来の自己利益を左右する勢力の保持者とそうでない相手との間に,明かな報酬分配傾向の見出せなかった。しかし有利な分配を行う際の動機として,債権志向性高群は低群にくらべて「取り入り」的動機を有意に多く示した。 *結果の一部は平成7年度日本グループ・ダイナミックス学会第43回大会で発表した。全体の報告をとりまとめて投稿準備中である。
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