研究概要 |
I 対人関係ストレス対処および心身ストレスに関する面接法による250名の老年期,向老期,中年期の記録を整備し,併せて生活特性や生きがい意識尺度の関連を準備し,II〜Vの結果を得た。 II 老年期の特徴:方法は,i健康状態,生活形態,家族関係,交友役割についてたずねた5問,iiストレス心身反応40問,iii老年期の17のカテゴリーに整理した対人関係のdaily hasslesを基礎に作成されたストレス対処行動様式14問,iv「生きがい意識」20問,合計79問の調査。完全回答の老年期130名。因子分析の結果,積極的,消極的,中立的対象の3種に区分。生活形態,家族関係,交友,役割に対して積極的対処は高く,生きがい意識も積極的対処は有意の正,消極的対処は有意な負の関連,中立的対処はなし。バスダイアグラムでは,積極的対処は正,消極的対処は負の因果係数をもつ生きがい意識が,ストレス心身反応に対して有意な負の因果係数を示す。対人関係ストレス対処様式が,生活条件,心身反応,生きがい意識といかなる因果関係をもつかをみることにより,老年期の特徴が明らかになった。 III 中年期・向老期の特徴:20歳代〜50歳代を主とする1,059名を対象。IIの老年期では家族関係を含めたが,ここでは職場関係を加え,Iと同様な調査を実施した。その結果,対人関係ストレス対処の中立的対処の働きが明らかなどの特徴が有意。 IV 老年期と他世代の比較:全対象者を30歳以下,30歳〜64歳,65歳以上の段階別に分別。対処行動得点,ストレス心身反応得点,生きがい得点に有意差。老年期では,ストレス心身反応が低い,また中年期向老期に比較して,ストレスヘの積極的対処と消極的対処の2傾向の分化が有意。 V この結果を,R.S.Lazarusらの対処理論およびE.H.Eriksonの自我発達理論に基づいて,老年期のストレス対処行動の特徴を生涯発達心理学的に考察した。
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