研究概要 |
本研究はわが国における友情概念を検討することを目的とした。Piaget, Selman, Younissなどの欧米の友情概念についての先行研究と比較しながら、友情について、わが国の子どもやおとなが持っている素朴理論を明らかにした。如何なる人間関係を友情と呼び、友人にどのような機能を求めているのか、それはいわゆる西欧流の、いいかえれば、これまでわが国の発達研究が当然としてきた友情概念と同じか否かを明らかにすることをねらいとした。具体的には、友人と呼ぶ人間の範囲、その人々との関係の質(情緒的、道具的な関係)について検討すること、そしてまた、友情概念が実際の友人との関係に直接的に関連しているか否かを明らかにすること、を目的として3種の個別面接調査を実施した。面接を録音し、後にすべて文字化してプロトコルを作成して分析した。調査対象は小学2年生から大学生までの男女、計約300名であった。 その結果、主に以下の4点が明らかになった。(1)いわゆる親友の概念(たとえば、どのような関係を親友と呼ぶか、親友はどのような心理的機能を持っているかなど)では、たとえば、ベルリンの子どもと差はなかった。(2)しかし、親友といわゆる友だちとのつきあいについて差をつけるかという質問では、ベルリンの子どもが親友を誰よりも大切にするとしたのに対し、わが国では親友だけではなく誰とも仲良くするのが望ましいとした。(3)それは、わが国では友だちと呼ぶ人間関係の範囲が欧米に比べて広く、ちょっとした知合いでも「友だち」と表現するような、「友だち」と言う言葉の使い方が異なっていることと関連していた。(4)しかし、わが国の子どもがだれとでも同程度に付き合っているのではなく、親しさの程度を区別して、ベルリンの子ども同様、選択的につきあっていることがわかった。
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