研究概要 |
研究1では,1)高齢者の社会性の二側面,すなわち能力的・技術的側面のSociabilityと情動的・意思的側面のsocialityの概念化を図り,質問紙法による集団測定のための質問項目の収集と項目分析を行うこと,2)両側面の世代差と性差を項目レベルで検討すること,3)社会性に関わる他の側面として自尊感情,Locus of Controlおよび対人不安の3尺度と社会性二側面の関連性を検討することの三点を目的として調査を行った。 その結果,Sociabilityの項目はやや低得点とやや高得点のグループに集中する傾向にあったが,Socialityは非常に高得点と非常に低得点に該当する項目もみられ,分布にやや違いのあることが示唆された。同時に,性別と世代による項目得点の相違に関しても新たな知見を得ることができた。さらに,3種類の関連尺度ど社会性二側面の各項目との相関を検討し,項目別の関連の程度に関するデータから,相対的に自尊感情と対人不安との関連性が高いことが明らかになった。 研究2では,軽費老人ホーム入居者の社会性二側面についての自己評価とホーム職員による他者評価(各対象者につき2名)の一致率を検討することを目的に,研究1の成果を参考にして新たに短時間で回答のしやすい項目を作成し,調査を行った。 評価の一致率をκ係数を求めて検討した結果,施設内生活,Sociability,Socialityの3種類に共通して自己評価と他者評価の一致率よりも他者評価同士の一致率の方が高いことがわかったが,他者評価間では0.4以上と高い一致率の項目数はSociabilityの方が多かったものの,0.2〜0.4の一致率の項目数ではSocialityの方が多いことが確認された。
|