研究概要 |
本研究では,環境問題が地球的規模で問題とされる状況のなかで,地域環境主義の立場に立ち,またその立場を理論的に形成していくものとして,農村社会の地域研究の積み重ねに依拠して,農村社会の環境問題と環境意識と題する調査研究を行った。 地域社会の事例としては,長年環境問題に係わってきた沖縄社会の開発に係わる農村部の環境問題と,現在の居住地である長野県の農村部の環境問題に対する住民の取り組に関する調査を実施した。 (1)前者については,本報告では昨年末から新しい動きを見せている沖縄県石垣島の新空港建設問題の動向のなかにある地元住民の環境意識について考察する。 (2)環境問題に関す世論の高まりのなかで,開発に係わる地元の「同意」の必要性については,長野県においても同様である。ただし,同県で今日最も大きな環境問題として住民の関心が高いのは,廃棄物処分場問題である。他方,長野県は山岳県であり,中山間地を多くかかえ,従って過疎地が多い。そうしたところでは,地域活性化の切り札として廃棄物処理場を引き受けるところがある。こうしたケースも一種の開発と考える人々がいることも確かである。もとよりそうした開発に関しても地元の同意なしには事業は進められない。そこで,本研究ではこの「地元の同意」が成立する社会的基盤たる地域社会の構造を,伝統的村落構造に依拠する人々と,都市的な生活感覚 行動パターンを持つ住民との結合に求めて,その結合=連帯の持つ意味を社会運動論的な観点から分析・考察した。
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