本研究の目標は、高度成長期を経て大きく変動した日本社会における人々の在り様をできるかぎり統合的に説明し得る、ライフスタイル概念を中核とした説明図式を、それに基づく実証的調査研究を具体的に実施しうる形で、構築することであった。すなわち社会的な次元での意識をめぐる経済的研究と理論的作業の関係を意識的に再検討し、経験的研究のための具体的な枠組みを再構築することを研究の具体的課題として設定した。第一章および第二章では80年代以降の日本社会の構造的特徴を捉える基本仮説を検討し、さらに社会意識研究として位置づけられる諸研究から社会意識研究の問題構成をなす作業仮説を抽出し、それらによって本研究の立脚する方法論的立場をさらに整理し明確化する作業を、社会意識論的アプローチと行為論的アプローチの統合の模索という方向で試みた。そうした作業を前提として、第三章では地域住民の生活意識を対象とする調査研究のための具体的枠組みを検討した。その概念は、行為論に立脚しつつ、個人をその生活欲求を様々な生活局面に組織的に投企しつつその充足を追求する統一的行為主体であると理念的にみなし、その行為主体の投企活動はライフスタイルという形で構造化され、その構造を統制する中核的要素は価値的要素であるとみなす。そして生活欲求投企の対象となる生活局面として家族に関係する生活領域、職業に関係する生活領域、地域に関係する生活領域、消費に関係する生活領域、余暇に関係する生活領域、政治に関係する生活領域の6つの局面を仮説するが、そこにはその内部においても関係においても価値的要素によるその行為主体に特有の構造的統制が存在し、それらに共通する様式がライフスタイルを形成すると仮設した。
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