研究概要 |
1)ドイツにおける障害児と健常児の共習学習(gemeinsames Lernen)の理論と実践及び制度的対応の実態について,文献と実地視察をとおして明らかにした。ドイツの教育は州の自治権に属し,それぞれの州が独自の教育法と文部省を持ち,障害児教育においても各州ごとに特色がある。したがって,研究は州を単位に行わなければならない。障害児のインテグレーション実施に関してドイツにおいてもっとも注目されている州の一つであるザ-ルランドを取り上げ,詳細に分析して論文として発表した。インテグレーション実施に際しては大学の障害児教育研究室の果たす役割,教員組合の役割が大きいこと,インテグレーションの実施に当たっては条件整備を前提としていること,親の決定権についてはザ-ルランドでは否定しており,申請権の形態をとっていることなどを明らかにした。 2)ドイツでは,学校の親の選択権を認めている場合でも,インテグレーションが行われているのは10%程度である。それは,(1)障害児学校は福祉的な機能を持っており,通常の学校に行くとそれがなくなること,(2)親も,条件のないインテグレーションは非教育的であると考えていること,(3)条件整備については,行財政的な制約が大きいこと,(4)実現する場合には,複数担任と学級定数の縮減(20人以内)が基本的なガイドラインになっていること,教師の一人は障害児教育の資格のあるものであること,(5)障害児教育の専門性が制度的に確立していること,専門性のないインテグレーションは考えられていないこと,この点で日本と根本的な違いがあることなどが明らかになった。 3)ドイツと日本の障害児教育の比較研究を推進するに当たり,ポツダム大学障害児教育研究室のDr. Salzberg女史との共同研究として日本の障害児教育の現状を分析し,ドイツの研究誌に掲載することになっている。
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