研究概要 |
平成7年度と8年度において、以下の研究成果を得た。 (1)平和博物館の比較・歴史社会学的考察により、戦後50年間における平和博物館の歴史的変遷をライフコースの視点から分析し、平和博物館の発展過程が明らかになった。国内の平和博物館は、(a)集団体験(多くは戦争体験)、(b)準備期、(c)開館,(d)転換期などの各段階を通ることがわかった。また、国内各地の平和博物館について、設立母体、発展段階、展示内容の質的転換と広がり、入館者の増減などから類型化を行い、それに基づいて考察を深めた。各地の平和博物館は、被曝、空襲、抑留・引き揚げ、特攻などそれぞれの地域の戦争体験と関わっており、さらに1980年代以降の「(d)転換期」においては戦争の歴史認識や平和学の発展とも密接に関わっていることが明らかになった。 (2)平和博物館の国際比較については、外国の平和博物館についての文献資料や、平和博物館が発行する資料や入館者へのパンフレットにより、各国の平和博物館の理念と実態を比較し、平和博物館の類型モデルを得た。国外の平和博物館は、ホロコーストの記録、抵抗体験の継承、積極的平和の実現などの展示テーマを持つことが示された。 (3)東京・京都・広島・那覇の各都市の中学生に対して、平和に関する意識調査を行った(1997.2-3)。平和博物館へ入館した多くの中学生が、平和博物館の展示に興味を示し、平和博物館の役割を良く評価している。平和な社会の形成に中学生が必要と思っているは、広島・長崎の原爆について学習だけでなく、いじめや環境の問題の学習、さらに障害者や高齢者や在日外国人との共生などである。
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